物の興廃は必ず人に由る。人の昇沈は定んで道に在り

弘法大師空海(真言宗開祖。774-835)

原文

物の興廃は必ず人に由(よ)る。人の昇沈は定んで道に在り。

意訳

物事が繁栄するのも、廃るのも、人の力によるものである。人の浮き沈みは、道の学び方によるものである。

出典

『続性霊集』

解説

『性霊集』の後半3巻が散逸したため、済暹が補完し、『続性霊集補闕鈔』(1079)とした。このためか後半3巻には弘法大師空海以外の詩文が含まれている。本書は詳しくは『遍照発揮性霊集』という。

妙機禅師の教え

世の中のさまざまな現象や出来事の変遷には、人々の行動や意志が大いに影響を及ぼすことを忘れてはならない。たとえば、町や国家の繁栄、文化の興隆も、平穏な暮らしも、すべては人々の寄与があってこそ成り立つものである。しかし、これらの変化の背後には、個々の心のありようや、生き方の選び方が深く関係している。

古の大師たちは、人生の浮き沈みがただ単に運や境遇に左右されるのではなく、自らの道に対する理解と実践に結びついていると説いた。つまり、己の精神修養や道の追求が、自身の運命を大きく左右するという考えである。

日本の仏教文学には、その教えの一環として、多くの詩文や説法が伝えられている。たとえば、『性霊集』やその補完版である『続性霊集補闕鈔』もそのひとつである。これらの書物には、弘法大師空海の思想が色濃く反映されているが、時に他の高僧の言葉も収められているのだ。こうした教えの中に、物の興廃や人の昇沈がどのようにして形成されるのか、その深い洞察が示されているのである。

私たちは、如何なる時にも、自らの心を正し、道を求める努力を怠らないようにすることが大切である。このような精神的な努力こそが、個人のみならず、社会全体の福祉や安定を築く基盤であると言えるだろう。人の行いが世界に影響を与えるこの法則を理解し、日々の生活において実践することが、真の安寧への道であると心得るべきである。

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